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[事例1-2] 研究開発業務従事者に妄想や幻覚を来たし自殺未遂した事例

 Aさんはある大手電気メーカーで携帯電話の研究開発に従事する32歳の独身社員です。もともとあまり社交的な性格ではありませんが、物静かで実直に仕事をこなすタイプの人物です。

 そんなAさんの上司から、ある日会社の産業医へ連絡が入りました。Aさんが最近おかしなメールを送るようになってきた、というのです。おかしなメールとは「自分のパソコンの中を誰かが侵入しているようだ」、「自分の業務成績を回りの人たちに覗き見されている」、「周りの人たちが自分の悪口を言っているようだ」というもので、こうしたメールをAさんは上司に頻繁に送りつけてくるようになったのだそうです。Aさんの上司は職場のネットワーク責任者やAさんの職場の同僚にそういう事実がないかどうか確認してみましたが、そのような事実はまったくありませんでした。

 産業医はAさんをすぐに精神科の専門医へ受診させて治療を受けさせたほうがいい、と上司に伝え紹介状を書いて渡しました。しかし翌日の朝Aさんは会社に出社してきませんでした。上司がAさんの自宅へ電話をしても応答がありません。上司は部下の一人を連れてAさんの自宅アパートに行きました。Aさんの家のベルを鳴らしてもまったく音沙汰が無いので、ドアを開けてもらうようにアパートの大家さんに連絡を入れました。大家さんの話だと、昨晩Aさんは隣の部屋から大きな声が聞こえてきて、うるさいと言ってアパートの壁を蹴って壊してしまい、アパート内が一時騒動になっていたということです。大家さんの鍵で部屋に入ったところ、Aさんは手にはカッターナイフを持って、手首を切って血を流していたところでした。幸い傷口は浅く、Aさんの上司と同僚はすぐにカッターナイフを取り上げてAさんを取り押さえました。聞けば、昨晩から近所の人たちから悪口を言われている、特に壁越しに隣の人から悪口を言われていて頭に来て壁を蹴った、またこのアパートには監視カメラがつけられていて、誰かに自分の行動を監視されているような気がする。そう思うと不安で耐えられなくなっていた、ということでした。上司は産業医と連絡をとり、紹介先の病院にすぐに入院できるようにお願いし、Aさんを病院へ連れていって入院させました。

 それから、約半年してAさんが主治医の復職可能との意見書を持って産業医との面談にやってきました。2か月間の入院治療、さらに4か月間の実家での療養と治療を経て復職となったとのことです。内服薬は続けているものの、Aさんに以前あったような妄想や幻覚などは見られなくなりました。Aさんは元の職場でまず開発に必要な情報収集など同じグループの仲間をサポートするような業務から復職をすることになりました。